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世界でも指折りの資産家であり、投資の神様とも言われるウォーレン・バフェット氏の経営するバークシャー・ハザウェイ社(以下「BH社」)は、リーマンショックで苦境の米銀に巨額の投資を行い、100億ドル(約1兆円! )もの利益を上げたようです。
バフェット“信者”も多く、彼を目指す投資家やファンド、経営者も多いのですがうまくいきません。その原因は、「良い企業に集中投資すればよい」という一面だけが注目され、「どうやったらあのタイミングで巨額の投資ができるのか」という重要なポイントに目が行っていないためと思われます。
■キャッシュポジションの分厚さがチャンスを生む
BH社は保険事業を中心に鉄道、公益・エネルギー、住宅建設・ローンからキャンディー製造まで幅広い事業を行う子会社を保有し、2012年末の連結ベースの総資産は4,274億ドル(約45兆円)もあります。総資産が大きいだけの会社なら山ほどありますが、他社との違いは「リーマンショックの際にどうしてあれだけの巨額の投資ができたのか」という点です。
BH社が他社の株式への純投資を行う保険事業(Insurance and Other)だけでも、総資産は2,780億ドル(約29兆円)もあります。この部門の財務諸表を見て普通の保険会社と大きく違うのは、現預金ポジションの多さです。2012年末で15%、金額にして423億ドル(約4.5兆円)もあり、いつでも投資できる資金になっています。
驚くべき点は、全世界的に株価が高い水準にあった2006年と2007年に、なんと資産の2割にも上る現預金ポジションがあったことです。これが2008年のゴールドマン・サックスなどへの破格の条件での巨額投資を可能にし、2008年には同部門の総資産に占める現預金の比率は12.2%まで下がっています。
さらに、株価が反転した2010年以降は徐々に現金の比率を再び増やし、次の好条件の投資機会に備えているように見えます。
●BH社保険事業の現預金/総資産比率
201215.2%
201113.4%
201014.9%
200912.5%
200812.2%
200718.1%
200620.3%
(出所:バークシャー・ハザウェイ財務諸表よりeワラント証券作成)
「保険業といっても業態にもよるでしょ」という声があるかもしれません。そこで、日本の生命保険大手の第一生命と損保ジャパンの同様の数値を見ると、BHほどすぐに投資できるキャッシュポジションを持っていないことが分かります。
●第一生命の現金+コールローン/総資産比率
2013.31.7%
2012.32.4%
●損保ジャパンの現金+コールローン/総資産比率
2013.34.6%
2012.36.3%
(出所:各社財務諸表よりeワラント証券作成)
それでも「BH社は合併の暖簾(のれん)代とかがあって簡単に比べられないでしょ」という声があるかもしれないので、現預金/有価証券の比率も計算してみました(日本企業は現金にコールローン、有価証券に貸付金を含む、BH社は保険事業のみ)。
●現金/有価証券の割合
BH社(2012)31.6%
第一生命(2013.3) 1.9%
損保ジャパン(2013.3) 5.9%
これを見ても日本の保険会社は「常に全力買い状態」になってしまっていて、相場の底で機動的に動ける状況にないのに対し、BH社は「有価証券投資ポジションの3割にも相当するキャッシュを持って好機を待ち構えている」と言えます。これが運用パフォーマンスの差を生むのです。
■「素晴らしい会社」を探すだけではダメ
さまざまなバフェット流投資の解説本には、投資の条件として「分かりやすい事業」「優秀な経営陣」「長く続くビジネス」を「安く買う」などとあります。このため日本では一部のプロでさえも、「日本経済が悪くても業績の良い株に投資すれば良い」「投資タイミングは分からないので考えるだけ無駄」「長期投資家は結局勝つ」などと言っています。
しかし、BH社の財務指標から読み取れるのは最後の「安く買う」が極めて重要で、そのために市場暴落時まで投資資金を温存することが成功のカギということです。言い換えれば、「ファンダメンタルズ分析でいくら素晴らしい企業を見つけても高く買ったら儲からない」のです。
これは株価=1株当たりの予想利益PER(株価収益倍率)と考えてみればすぐに分かります。現在のように「PER20倍も当たり前」という時期と、昨年秋までのように「PER10倍以下が普通」という時期では、1株当たりの予想利益が同じでも株価が倍も異なります。仮に、来年に「PER30倍が普通」になれば同じ業績でもこれから50%も株価が上昇することになります。
「それでも良い会社は相場が回復すれば株価が戻るから、やっぱりいつ買ってもいいでしょ? 」と主張する方もいます。しかし、20年近く日経平均やTOPIXが総じて下落トレンドであったということは、新興企業株などを除けばほとんどの大手企業の株価が下げ続けたことを意味します。日本株全体のPERがバブル期の40~50倍に戻ることはないと思うなら、やはり高く買わないことが重要なのです。
もちろん、投資タイミングもぴったりで、投資資金があったとしてもM&Aで「毒饅頭」を掴まされた大企業の例も国内外に多いので、「何を買うか」の重要性は否定できません。しかし、「バリュー投資」や「永久保有」なら安心とばかりに、「いい会社さえ見つければよい」という「バフェットもどき」ではうまくいかないのです。
■クラッシュを利用するか、うまく乗り切るかを考えるべし
これからも世界経済の一体化は続くでしょうから、ますます各国の株式相場や原油・金価格の相関が高まり、相場の山も谷も大きくなりそうです。在来型の国内金融機関の多くは、いまだに「ゴテゴテの仕組み債」「新興国や国内外の株・債券・REITだけに分散投資するファンド」などの販売に注力しているようです。また、「日本株を長く持ち続けるだけで老後の資金は安心」と根拠なく主張している日本株投資の専門家や株式評論家もいます。
もちろん、「2008年のリーマン・ショックの後も、米国株はすぐに戻ったし、アベノミクスで日本株も回復したから、やっぱり先進国株式への長期分散投資が正解じゃない? 」や、「常に目一杯投資する方が機械的で楽でしょ」という考え方もあるでしょう。
しかし、7年から10年の景気循環と株式相場が一致することや、従来の分散投資ではクラッシュへの対応にならないこと、日本のような少子高齢化による長期株価下落トレンドはこれから他の国でも起こると予想されています。
何も対策を考えず、「不況時には投資資金が使えず」「何年間も損失を抱えて辛い思いをし」「相場の底で絶好の投資できる時にキャッシュがなかった」ことを投資家が甘受すべきというのは、金融関係者の怠慢とも言えるでしょう。
一方、海外の先進的な投資家は、「どうやってジェットコースター相場の影響を軽減するか」、あるいは「バブルとクラッシュを前提にどう儲けるか」と考え始めています。バフェット氏のように、平時に現金を厚めに保有して何年でも好機を冷静に待つことができれば、「クラッシュ時に、生き残っている企業に、割安な価格で、集中投資する」ことで十分リスクは低減できるでしょう。
というのは、すでに従来分散投資などで回避しようとしていたクラッシュが起こった直後なら、生き残った優良な企業はしばらくの間は大丈夫といえるからです。個人投資家でも、「現金ポジションを厚く持って、投資機会を数年でもじっくり待つ」ということはすぐにでも実践できる効果的な投資戦略です(ただしかなりの自制心が必要)。
その他の方法としては、「一部のヘッジファンドなどのように投資戦略そのものを分散し、相場の上げ下げ以外に収益源を見出す」「各国の株式との相関がまだ低いアフリカや実物資産・公益事業への投資を増やす」「平時の相関ではなく、クラッシュ時の相関を使ってポートフォリオを再構築する」「資産の8割を安全資産、2割をリスクの高い資産に投資する」といった対応があるでしょう。
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(土居 雅紹)
引用:「素晴らしい会社」を探すだけでは儲からない にわかバフェット信者が投資に大失敗するワケ
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